金融資産の運用を行っている人の中には、NISAやつみたてNISAを活用することによる節税効果を期待して、活用するか検討している人も多いのではないでしょうか?
しかし、NISAとつみたてNISAは併用することができないため、どちらを選択するかが重要になってきます。
そこで今回は、NISAとつみたてNISAにはどんな違いがあるのか、つみたてNISAの特徴とメリット・デメリットについて詳しく解説していきます。
金融商品の投資には税金がかかる
株式投資や投資信託などの金融商品に対して投資を行ったことによって発生する利益には税金がかかります。
給与所得にかかる税金は、累進課税が適用されているため、所得が多くなれば多くなるほど税率が高くなるという特徴があります。しかし、金融商品を運用したことによって得られる配当金や分配金の配当課税、譲渡益の譲渡益課税の税率は一定です。
そのため、所得が多くなっても税率は変わらないので、利益が多くなっても安心して運用を行うことができますが、逆に利益が少なくても同じ税率であるため、少額投資の人は損することになります。
そこで登場したのが、少額投資非課税制度のNISAです。NISAとは
NISAとは、少額投資家が資産運用を行いやすい環境を作るほか、まだ運用を行ったことがない人にも投資を始めるきっかけ作りとして導入された非課税制度のことです。
NISAには以下のような特徴があります。
- 20歳以上であれば誰でも申し込める
- 期間は2014年から2023年までの10年間
- 非課税期間は最長5年間
- 新規投資額で毎年120万円が上限(非課税投資枠は最大600万円)
- 投資対象は株式投資と投資信託
例えば、新規公開株であるIPOに参加する際にNISAを活用するとします。
上場前の価格が50万円で上場後に150万円で売却したとすると、約20%の課税が行われるため、上場後の利益は80万円になりますが、NISAを活用していれば100万円全てが利益になります。
つみたてNISAとは
NISAが投資対象としている株式投資は全部で約3,600銘柄あるほか、投資信託も約6,000商品あるため、どれを運用すればいいのか運用初心者にとっては判断しづらいと言えます。
そこで登場したのがつみたてNISAです。
つみたてNISAには以下のような特徴があります。
- 20歳以上であれば誰でも申し込める
- 期間は2018年から2037年までの20年間
- 非課税期間は最長20年間
- 新規投資額で毎年40万円が上限(非課税投資枠は20年間で最大800万円)
- 投資対象は金融庁が指定した投資信託のみ
20歳以上であれば誰でも申し込めるのはNISAと同じですが、長期的に安定した資産運用を行うことを目的としているため、非課税期間が長く新規投資額はNISAよりも少ないという特徴があります。
つみたてNISAのメリットとは
つみたてNISAは、資産運用の初心者が運用に参加しにくいという反省から登場しましたが、どのようなメリットがあるのでしょうか?
つみたてNISAのメリットは以下の3つです。
- 投資対象を金融庁が指定
- 非課税投資枠がNISAよりも大きい
- NISAよりも投資リスクが低い
それぞれのメリットについて見ていきましょう。
投資対象を金融庁が指定
NISAは株式投資や投資信託を対象としているため幅広く運用できますが、つみたてNISAは金融庁が指定した投資信託に限定されています。
株式投資で約3,600銘柄、投資信託で約6,000商品の10,000に迫る投資対象の中から何に投資するのかを選ぶのは難しいと言えます。
非課税投資枠がNISAよりも大きい
NISAの新規投資額は120万円で、最長5年間の非課税期間であるため、最大で600万円の非課税投資枠になります。
しかし、つみたてNISAの新規投資額は40万円で、最長20年間の非課税期間であるため、最大で800万円の非課税投資枠になります。
NISAよりも投資リスクが低い
つみたてNISAは、価格変動の大きい株式投資を投資対象としていません。
分散投資によるリスク軽減と少額投資によるリスク軽減が期待できる投資信託を投資対象としています。
また、つみたてNISAの投資信託は、金融庁が長期・積立て・分散投資に適した運用商品を厳選しています。
例えば、販売手数料や信託報酬などの手数料が0円または低い運用商品、長期運用に最適な頻繁に分配金が支払われない運用商品などに絞ってくれているため、初心者でも安心して運用を始めることができるでしょう。
つみたてNISAのデメリットとは
リスクが低く、運用商品が限られているため、初心者でも安心して運用できるつみたてNISAですが、どのようなデメリットがあるのでしょうか?
つみたてNISAのデメリットは以下の3つです。
- 損益通算ができない
- 繰り越し控除ができない
- 投資対象が限定されている
それぞれのデメリットについて見ていきましょう。
損益通算ができない
金融商品の運用を複数の証券会社の口座で行っていると、損益通算を行うことができます。
損益通算とは、A口座で50万円の利益が生じていて、B口座で20万円の損害が生じている場合に、50万円の利益と20万円の損害を通算して30万円のみ課税するというものです。
しかし、つみたてNISAの口座は損益通算できません。そのため、A口座で50万円の利益が生じていて、つみたてNISAのB口座で20万円の損害が生じている場合でも通算できず、利益の50万円に課税が行われるのがデメリットと言えるでしょう。
繰り越し控除ができない
損益通算を行ってもまだ損害が残っている場合は、3年間にわたって損害を繰り越すことができます。
しかし、つみたてNISAは、他の口座と損益通算ができないほか繰り越すこともできません。つみたてNISAの口座に大きな損害が生じていても、他の口座と損益通算や繰り越し控除ができないのは、節税効果を期待している人にとっては大きなデメリットと言えるでしょう。
投資対象が限定されている
初心者にとっては、投資対象が限定されている方が自分に合った運用商品を選びやすいと言えますが、運用経験がある人にとっては、運用商品が限定されている状況は喜ばしいことではありません。
投資信託でハイリスク・ハイリターンの運用商品を選びたくても対象でなかった場合には、つみたてNISAの魅力を最大限に活かすことができないと言えるでしょう。
慎重に選ぶことが重要
NISAは1年あたりの新規投資額が大きく、幅広い投資対象の中から選ぶことができるため、玄人向きの非課税制度と言えますが、つみたてNISAは非課税投資枠が大きく、投資対象が厳選されているため、素人向きの非課税制度と言えます。
どちらもメリット・デメリットがありますが、併用することはできないため、自分に合っているのがどちらなのかよく考えてから慎重に選ぶことが重要と言えるでしょう。まとめ
金融商品の運用を行っている人、これから行おうとしている人にとって、NISAやつみたてNISAの非課税制度は大きな節税効果が期待できるため、活用しない手はないと言えます。
しかし、NISAは玄人向き、つみたてNISAは素人向きといったように、それぞれメリットとデメリットがあります。
両方を併用して金融商品の運用を行うことはできないため、どちらが自分に合っているかよく考えてから選ぶようにしましょう。