個人投資家が資産運用を行いやすい環境作りとして2014年にスタートした税制優遇制度であるNISAですが、2018年からは少額投資を支援する税制優遇制度としてつみたてNISAがさらに加わりました。NISAとつみたてNISAにはどのような違いがあるのでしょうか?

そこで今回は、低リスクで運用できるつみたてNISAについて、つみたてNISAとはどんなものなのか、その特徴について詳しく解説していきます

金融商品の投資には税金がかかる

金融商品の投資には税金がかかる

株式投資や投資信託などの金融商品の投資を行って利益が生じた場合には、税金がかかります。

売買によって生じた利益は「譲渡益課税」、定期的に支払われる配当や分配金などは「配当課税」が課せられます。

給与所得などに対してかかる所得税は、累進課税といって、所得が多くなるほど税率が高くなるという仕組みになっていますが、譲渡益課税と配当課税の税率は一定です

金融商品を運用した場合における利益がどれだけ多くても、所得税15.315%と住民税5%(所得税は復興特別税が加算)を合算した20.315%が一律で徴収されることを考えると、給与所得より税制面ではかなり優遇されていると言えます。

しかし、逆に考えると、どれだけ利益が少なくても一律で課税されるということは、少ない利益がさらに圧縮されるため、少額投資家にとっては投資に参加しにくい環境と言えるでしょう。

NISAとは

NISAとは

少額投資家がもっと金融資産の運用を行いやすいように、2014年にスタートしたのがNISAです。

NISAとは、少額投資を行う人が運用によって得た利益を非課税にする制度です。

日本に住んでいる人で20歳以上であれば誰でも利用できる制度で、株式・投資信託などに投資した場合に得られる配当金や分配金、譲渡益などが非課税になります。

2014年から2023年までの10年間の投資が対象、非課税期間は最長5年間、新規投資額で毎年120万円が上限(非課税投資枠は最大600万円)となっているのがNISAの特徴です。

しかし、NISAが対象としているのは、約3,600社が上場している株式投資や約6,000本の運用商品を揃えている投資信託であるため、知識の少ない運用初心者にとってはなかなか始めにくいというデメリットがありました

そこで登場したのがつみたてNISAです。

つみたてNISAとは

つみたてNISAとは

つみたてNISAとは、少額投資家の中でも特に運用初心者が安心して金融資産の運用を行いやすいように、2018年にスタートした少額投資非課税制度のことです。

日本に住んでいる人で20歳以上であれば誰でも利用できるという点はNISAと同じですが、金融庁が指定した一部の投資信託に投資した場合に得られる分配金や譲渡益などが非課税になります。

2018年から2037年までの20年間の投資が対象、非課税期間は最長20年間、新規投資額で毎年40万円が上限(非課税投資枠は20年間で最大800万円)となっているのがつみたてNISAの特徴です。

 1年あたりの新規投資額は減少したものの、非課税投資枠の上限が引き上げられているほか、金融庁が指定した投資信託に限られているなど、初心者でも始めやすい環境が整っていると言えるでしょう。

つみたてNISAの3つの低リスクとは

つみたてNISAの3つの低リスク

つみたてNISAは低リスクと言われていますが、どのような点が低リスクなのでしょうか?

つみたてNISAの低リスクのポイントは以下の3つです。

  • 少額投資による低リスク
  • 投資対象による低リスク
  • 分散投資による低リスク

それぞれのポイントについて詳しく見ていきましょう。

少額投資による低リスク

NISAが対象としている株式投資や投資信託の中には、投資を行うにあたって多くの資金を必要とするものもあるため、リスクが高くなる可能性があります。

つみたてNISAが対象としている投資信託は、金融庁が指定した少額からでも運用を始めることができる投資信託に限定されており、初期投資を抑えることでリスクも抑えることができます。

そのため、運用初心者や少額から運用を始めたい人にも気軽に運用を始めやすいと言えるでしょう。

投資対象による低リスク

NISAのように、自分で投資対象を選ぶ場合には、選んだ銘柄や運用商品によっては、価格変動リスクの影響を大きく受けてしまう可能性があります。

しかし、つみたてNISAは、安定的な資産形成を目指しており、長期・積立て・分散投資に適した投資対象に限定されています。

 販売手数料や信託報酬などの投資信託を運用する際にかかる手数料が0円、または低い運用商品や長期運用に最適な頻繁に分配金が支払われない運用商品を投資対象としているため、低リスクでの運用を期待できるでしょう。

分散投資による低リスク

NISAを活用して株式投資を行う場合は、1銘柄に絞って運用することで、価格変動リスクや上場廃止などの信用リスクが1点に集中するため、リスクが高いと言えます。

しかし、つみたてNISAが対象としている投資信託は、リスクの低い国債や国内株式のほか、リスクの高い海外株式などをバランスよく組み合わせることによって、リスクを管理しています。

万が一の事態が生じても被害を最小限に抑えることができるため、リスクを抑えながらの運用が期待できるでしょう。

つみたてNISAの注意点とは

つみたてNISAの注意点とは

リスクを低く抑えながらも、NISAより大きな節税効果が期待できるつみたてNISAですが、注意しておくべきポイントはあるのでしょうか?

つみたてNISAの主な注意点は以下の3つです。

  • 投資対象が限定されている
  • 損益通算ができない
  • 非課税枠の繰り越し・復活はできない

それぞれの注意点について見ていきましょう。

投資対象が限定されている

つみたてNISAの投資対象は、金融庁が低リスクと判断した投資信託に限定されています。

投資信託全体で約6,000もの運用商品があるにも関わらず、投資対象はインデックス型の投資信託143本、アクティブ型の投資信託18本の計161本だけです

 低リスクにこだわる人や運用初心者などには向いていると言えますが、投資経験が豊富な人の中には、選択した運用商品がつみたてNISAの対象外で、煩わしく感じてしまう場合があると言えるでしょう。

損益通算ができない

複数の証券会社の口座で取引を行っている場合には、損益通算によって節税を行うことができます。

例えば、A口座で利益が50万円、B口座で損害が30万円の場合には、通算して20万円に対して課税されることになります。

しかし、つみたてNISAの場合は損益通算ができません

A口座で利益が50万円、つみたてNISAのB口座で損害が30万円の場合でも、通算することはできず、50万円に対して課税されるので注意しましょう

非課税枠の繰り越し・復活はできない

つみたてNISAの非課税枠は1年あたり40万円までですが、そのうち10万円使ったからといって、翌年に残りの30万円を繰り越して非課税枠を70万円にすることはできません。

また、40万円の非課税枠のうち10万円を使って年内に売却しても、非課税枠が40万円に復活するわけではありません。

 一度使った非課税枠は、投資に回したものと判断されるため、10万円を引いた残りの30万円しか非課税枠として使えないので注意しましょう。

まとめ

まとめ

個人投資家が資産運用しやすい環境作りを目的として登場したNISAですが、運用初心者や少額で運用したいという人にとっては使い勝手が悪いというデメリットがありました。

そこで、2018年からは、運用初心者や少額で運用したい人でも気軽に運用を始めることができるつみたてNISAが登場しました。

つみたてNISAは、NISAより非課税投資枠が大きいほか、金融庁が指定した低リスクの投資信託のみを投資対象としているのが特徴です。

リスクを抑えつつ安定した運用を行いたい人にとっては最適な少額投資非課税制度と言えるでしょう。

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