少子高齢化によって日本の平均寿命が男女ともに80歳を超えており、人生100年時代を視野に入れる必要がでてきました。
そのため、今まで以上に老後資金がいくら必要なのか気になっている人も多いかと思います。
一部では「老後資金は1億円必要」とも言われていますが、本当に必要なのでしょうか?
そこで今回は、老後資金に1億円必要なのか、実態と補う方法について解説します。
老後資金が1億円必要なのは本当か
老後資金について調べてみると、「3,000万円」「5,000万円」「1億円」など、様々な金額が記載されています。
生命保険文化センターが実施している意識調査によると、夫婦2人で老後生活を送る上で必要とされる最低日常生活費は約22万円という結果になっています。
一方で、老後にゆとりをもって生活したい場合は約34.9万円とされています。
仮に、年金が支給される65歳まで働き、90歳までの25年間を元気に過ごしたとすると、最低日常生活費では「22万円×12ヶ月×25年=6,600万円」が必要になります。
こちらも、ゆとりをもって生活したい場合は、「35万円×12ヶ月×25年=1億500万円」が必要になります。
最低日常生活費でも、100歳までの35年間を元気に過ごした場合には「22万円×12ヶ月×35年=9,240万円」が必要になるため、1億円という額はあながち間違っていないと言えるでしょう。
年金と退職金で一部は補える
1億円という金額は老後に必要な資金で、老後を迎えるまでに準備しておかなくてはならない額ではありません。
サラリーマンとして働いている人のほとんどは退職金が得られるだけでなく、年金収入も65歳になってから安定して得られるため、不足分さえ補えれば良いと言えます。
一般的に、大卒で35年以上勤続した人の年金は2,500万円程度、高卒で2,000万円程度と言われています。
また、夫がサラリーマンで妻が専業主婦の場合のモデルケースでは、65歳を迎えてからの年金受給額は1ヶ月あたり約24.3万円です。
90歳までの25年間年金を受給したとすると、「24万円×12ヶ月×25年=7,200万円」になります。
老後資金の1億円から退職金の2,000万円、年金受給額の7,200万円を引くと800万円が不足することになります。
退職金が貰えない企業もあるほか、年金も人によって受給額に大きな差があるので一概には言えませんが、余裕をもって2,000万円程度は老後に備えて貯蓄しておいた方が良いでしょう。
不足する分をいつから貯め始めるかが重要
老後に備えて2,000万円を貯蓄するには、毎月どのくらい貯蓄すればいいのでしょうか?
例えば、20歳から60歳まで毎月コツコツ貯める場合には、1ヶ月あたり41,668円貯める必要があります。
20歳ではなく30歳から貯蓄を始めた場合では55,556円、40歳では83,334円、50歳では166,668円となります。
当然ですが、20歳からコツコツ貯めていれば1ヶ月あたりの貯蓄額は少なくて済みます。
確実に老後資金を確保するためにも、なるべく早い段階で貯蓄を始めておいた方が良いと言えるでしょう。
老後不足する資金を補う方法5選
老後不足する資金を補うと言っても、生活費がかかるだけでなく、子供の教育費、住宅の購入費など、様々な支出が発生するため、簡単にお金は貯まりません。
いくら20歳からお金を貯めようとしても、税金や生活費などを引いた残りから毎月41,668貯めていくのは困難と言えます。
では、老後の不足する資金を補うにはどうすればいいのでしょうか?
老後の不足する資金を補うには以下の5つの方法があります。
- アルバイトをする
- 年金の繰り下げを検討する
- 投資信託を始める
- 不動産投資を始める
- ソーシャルレンディングを始める
それぞれの方法について見ていきましょう。
アルバイトをする
1つ目の方法は、アルバイトをすることです。
現役時代にアルバイトをするとなると、体への負担が大きくなることに加え、副業を禁止している企業もあるため、あまりおすすめとは言えません。
しかし、定年を迎えた65歳から70歳程度までは、まだ体力的にも働ける余裕があるため、シルバー人材センターなどでアルバイトをするのも1つの選択肢と言えます。
仮に1ヶ月15万円貰えたとすると、65歳から70歳の間に900万円貯められます。
現役時代の給与と比べると少なく労働対価が合わない、定年を迎えた後に働きたくないと思っている人もいるかもしれません。
しかし、老後5年で900万円補えることを考えると、検討の余地は大きいと言えるでしょう。
年金の繰り下げを検討する
2つ目の方法は、年金の繰り下げを検討することです。
何も申請しなければ65歳から年金が支給されますが、繰り下げ支給するとその分年金の受給額が増えます。
年金を繰り下げた場合の増額率は「65歳に達した月から繰り下げ申請月の前月までの月数×0.7%」です。
例えば、70歳に支給を繰り下げた場合は42%も年金を増額することが可能です。
70歳まで退職金や貯金を切り崩す、またはアルバイトをするなどで生活費を補えば、42%も年金を増やせるので、不足分を補いやすくなると言えるでしょう。
投資信託を始める
3つ目の方法は、投資信託を始めることです。
上記2つは老後の対策でしたが、以下の3つは老後を迎えるまでの対策となります。
不足する老後の生活費を貯めようとしても、そう簡単には貯められる額ではないため、資産運用で効率良くお金を増やしていくことが重要です。
投資信託では、自身で運用するのではなく運用のプロであるファンドが代わりに運用してくれる、少額からでも運用できるため、初心者でも比較的始めやすいと言えます。
また、中には利回りが10%を超えるものもあるため、不足する老後資金を効率良く補えるでしょう。
不動産投資を始める
4つ目の方法は、不動産投資を始めることです。
不動産投資を始めるには、不動産を購入する必要があるため「自己資金が足りない」と思われている人も多いでしょう。
しかし、条件次第では銀行の融資を受けながら運用を始められるため、ハードルは低くなりつつあります。
不動産投資では安定した家賃収入が期待できるため、老後の私的年金代わりになるほか、急にまとまった資金が必要になっても売却すれば現金に変えることが可能です。
世帯数(特に1人暮らし)が増えていることを考えると、まだまだ需要は期待できると言えるでしょう。ソーシャルレンディングを始める
5つ目の方法は、ソーシャルレンディングを始めることです。
ソーシャルレンディングとは、企業への融資のことです。
社債に似ている部分がありますが、社債を発行するには手間がかかることから、ソーシャルレンディングを活用する企業が増えています。
融資案件の中には、担保が設定されていて返済が滞った場合でも元本が保証されるものもあるため、安心して融資できます。
銀行に預けても普通預金の金利が0.01%、定期預金で0.1%であることを考えると、利回りが5%程度であるソーシャルレンディングは魅力的と言えるでしょう。まとめ
実際に計算してみると、老後に必要な資金は約1億円と言えますが、1億円の貯金が必要というわけではありません。
老後を迎える際は、退職金や65歳からは安定した年金受給があるため、不足分を補う必要があります。
人によって不足額は大きく異なりますが、老後を迎える前に2,000万円程度の貯蓄があれば比較的余裕があると言えます。
老後を迎えるまでに様々な支出があるため、2,000万円と言っても簡単には貯まるものではありません。
老後もしばらく働く、年金の繰り下げ受給、資産運用など、不足する老後の資金を補うための計画をしっかりと事前に立てておきましょう。