老後の安定した暮らしをするために、計画的に老後資金を貯めようとしている方も多いでしょう。
とはいえ、子供の教育費や住宅ローンの返済など、現時点の支出が多く、老後資金にまわせるお金がないということありませんか?
年金や退職金などの支えがあるといっても、まとまったお金がないと老後に不安を感じてしまうことになります。
そこで今回は、年金や退職金だけで安心して暮らせるかどうか、老後の実態と必要な老後資金について解説します。
老後のお金がない人は意外と多い
退職時は退職金としてまとまったお金が得られるだけでなく、年金に加入すれば安定した年金が継続的に得られるため、老後にお金がない状態というのは考えられないかもしれません。
しかし、実際には老後にお金がない高齢者の数は増えているため注意が必要です。
金融広報中央委員会が公表した「家計の金融行動に関する世論調査」では、何らかの金融資産を有していない60歳代の単身世帯は26.7%という結果になっています。
2人以上世帯では、60歳代が22.0%、70歳以上は28.6%と約4世帯に1世帯がお金がない状況となっています。生活保護申請者の割合も、高齢者が増えていることを考えると、老後生活はかなり厳しい状況となっていることが分かります。
なぜ、このような状況になっているのでしょうか?
モデルケースより少ない平均年金額
日本年金機構が公表した「40年間年金に加入した夫と専業主婦である妻の厚生年金のモデルケース」では、1ヶ月あたり約22万1,000円支給されることになっています。
また、自営業などで国民年金に加入している人の場合、満額が決まっているため1ヶ月あたり6万4,941円支給されることになります。
しかし、実際の厚生年金の平均受給額は14万7,927円、国民年金は5万5,464円とモデルケースとは大きくかけ離れているのが現状です。
モデルケースと乖離している背景には、妊娠で未納期間があるなど、何かしらの理由があります。
モデルケースを想定していると、老後資金が不足して老後貧乏に陥る可能性が高くなるため注意が必要です。
また、年金は恒久的に支給することを目的としているため、年金の資金が底をつくことがないよう支払予定額を減額する可能性があります。
そうなると、今後さらに老後のお金がない高齢者が増える可能性もあるため、老後資金の準備が重要と言えるでしょう。
変わらない老後の平均支出額
家計調査によると、高齢夫婦世帯の1ヶ月あたりの平均支出は約24万円となっています。
1ヶ月あたりの平均支出は年ごとの大きな変動が見られないため、平均年金額と比較すると毎月不足していることが分かります。
子供の有無、持ち家や賃貸住宅といった各家庭によって支出に差が生じますが、それでも年金額が支出額を上回る可能性は低いと言えます。
また、2019年10月に8%から10%への消費税引き上げが予定されていることを考えると、今後支出が増える可能性があるため、老後資金をしっかり確保することが重要と言えるでしょう。
退職金は貰えない可能性もある
「老後の年金額が支出額を下回っている状況でも、退職金があればある程度対応できるのでは?」と気になった人もいるでしょう。
しかし、退職金は必ず貰えるものではありません。
労働基準法に「退職金は必ず支払うもの」とは記載されておらず、支払うかどうかは企業次第です。従業員数が多い大企業では比較的退職金が支払われることが多いものの、中小企業では退職金制度を設けていないところも多いなど、約4分の1の企業が退職金制度を設けていません。
退職金制度を設けている企業では、大企業の大卒で約2,490万円、高卒で約2,270万円、中小企業の大卒で約1,140万円、高卒で1,090万円となっています。
退職金の有無で老後の余裕が大きく異なるため、年金制度がある企業かどうか事前に確認しておくようにしましょう。
老後資金として最低でも3,000万円は必要
高齢夫婦の1ヶ月あたりの平均支出額を約24万円、平均受給額を約15万円とした場合、1ヶ月あたり約9万円不足します。
日本の平均寿命は男女ともに80歳を上回っているため、65歳から90歳まで25年間元気に過ごした場合で計算すると、「9万円×12ヶ月×25年=2,700万円」を貯めておかなくてはなりません。
平均寿命が延びている状況を考えると、人生100年時代に備える必要があるほか、病気で支出が増えることを想定する必要もあります。
老後にお金がないという事態を防ぐためにも、最低3,000万円は貯蓄しておくことをおすすめします。
不足する老後資金を補う方法3選
老後資金が3,000万円不足するといっても、そう簡単に貯められるものではありません。
いざ老後を迎えた時に「お金がない」となっても手遅れにならないためにも、以下の3つの方法で補うことが大切です。
- 投資信託
- 不動産投資
- ソーシャルレンディング
それぞれの方法について見ていきましょう。
投資信託
不足する老後資金を補う1つ目の方法は、投資信託です。
投資信託とは、自らが株式投資や国債投資などをするのではなく、資産運用のプロであるファンドに資金を預けて代わりに運用してもらい、利益を分配金として得る運用方法です。
資産運用のプロが代わりに運用してくれるということは、自ら資産運用する手間を省けるため、効率良く老後資金を貯めることができます。
資産運用の知識がない初心者でも安心して始められるでしょう。
また、投資信託の中には年間の利回りが10%を超えるものもあるため、老後お金がないという状況を防ぐのに適していると言えます。
不動産投資
不足する老後資金を補う2つ目の方法は、不動産投資です。
不動産投資とは、不動産を購入して貸し出すことで家賃収入を得る運用方法です。
物件を購入する資金が足りない人でも、物件を担保に銀行から融資を受けられる可能性もあるため、始めるハードルが低くなっています。
また、不動産投資では家賃収入が老後の年金代わりになるほか、老後急に資金が必要になった場合でも物件を売却することで、まとまった資金が得られます。
実物資産への投資であるため、建物を売却すればある程度の初期投資を回収できることを考えると、リスクも抑えながら不足する老後資金を貯められるでしょう。ソーシャルレンディング
不足する老後資金を補う3つ目の方法は、ソーシャルレンディングです。
似たようなお金を増やす方法として社債がありますが、ソーシャルレンディングは社債よりも利回りが高く豊富な案件を抱えているのが特徴です。
また、ソーシャルレンディングは企業への融資であるため、企業が倒産した場合は返済されないリスクがありますが、担保を有している案件もあるのでリスクを抑えることも可能です。
以前は貸金業法の関係上、融資先の情報をあまり公にできませんでしたが、最近では一部情報公開されるようになっているため、よりリスクが抑えられるようになりました。
利回りは5~8%の案件が多く、投資信託や不動産投資のように運用成績の影響を受けないことを考えると、確実にコツコツ増やしていきやすいと言えるでしょう。
まとめ
老後の収入は、何らかの備えをしていない限り、年金収入のみとなります。
ただし、平均年金額は平均支出額を下回っている状況なのが現実。
老後の備えを何もしていない場合は、お金がない老後貧乏に陥る可能性が高くなってしまいます。手遅れになってしまう前に、資産運用などを始めて老後資金を確実に貯めていきましょう。