安定した老後生活のために、老後にどのくらいの費用がかかるのか調べている人の中には、支出の中で保険料の占める割合が高いことが気になった人も多いでしょう。
会社勤めの人の場合には社会保険に加入するのが一般的ですが、老後はどのような保険に加入することになるのでしょうか?
今回は、老後に加入する保険の料金がなぜ高いのか、老後にかかる支出について詳しく解説します。
老後の保険料が高い理由は保険が切り替わるため
「少子高齢化」という言葉の通り、日本の平均寿命はどんどん右肩上がりになっています。
今の日本の平均寿命は男女ともに80歳を超えている状況で、女性はあと数年もすれば平均寿命が90歳に突入するなど、人生100年時代が当たり前になる可能性があります。
そのため、これまで「退職金や年金があれば何とかなる」と考えていた人でも、「そろそろ老後の収入や生活費の実体を調べて備えておかなくては」と考え方が変わった人も多いのではないでしょうか?
老後の支出について調査を進めてみると、退職前と退職後で保険料の負担額が大きくなっていることに気づきます。
現役時代に会社勤めだった人は社会保険加入者であるのが一般的ですが、老後は社会保険ではなく国民保険に加入することになります。
保険料が高くなる理由は、社会保険から国民保険に切り替わることが主な理由ですが、社会保険と国民保険にはどのような違いがあるのでしょうか?
社会保険とは
社会保険とは、全国健康保険協会「協会けんぽ」が運営している健康保険のことです。
社会保険は、一定の従業員を抱える企業で、その企業に属して働いている以下のような人たちに加入資格があります。
- 正社員
- パートやアルバイト
パートやアルバイトの場合には、所定労働時間が週20時間、月額賃金8.8万円以上、勤務期間1年以上、従業員規模501人以上を満たす場合です。
また、従業員規模が500人以下の場合でも、労使合意で適用、国・地方公共団体は適用の条件を満たせば社会保険に加入可能です。
社会保険は、会社員の配偶者や扶養家族にも適用されるほか、保険料は起業との折半なので負担が抑えられるのがメリットと言えるでしょう。
国民健康保険とは
国民健康保険とは、市町村が主体となって運営している健康保険のことです。
国民健康保険は、社会保険のように企業が加入するのではなく、自営業や自由業、無職などのように企業や団体に属していない人が加入します。
企業や団体に属している場合でも、所定労働時間や月額賃金の下限を満たしていない人は社会保険に加入できないため、国民健康保険に加入することになります。
国民健康保険は、社会保険のように企業との折半ではなく、扶養という概念がないため、保険料が社会保険と比較して割高になります。
そのため、退職までは妻が扶養で企業との折半で負担していた社会保険料が、退職とともに国民保険に切り替わることで、保険料が全額負担になります。
また、妻の保険料も発生することで老後の保険料の金額が高くなっていると言えるでしょう。
老後にかかる主な支出とは
老後にかかる保険料の金額が大きくなることは分かりましたが、実際にどの程度の支出が発生するのでしょうか?
総務省の家計調査によると、世帯主が60歳以上、無職夫婦世帯の1ヶ月支出は以下のような結果になっています。
- 食費:68,193円
- 住居費:14,346円
- 水道光熱費:20,427円
- 家具・家事用品:9,290円
- 被服等:6,737円
- 保険医療費:14,646円
- 交通・通信費:26,505円
- 教育・教養娯楽費:25,712円
- お小遣い:6,225円
- 交際費:25,243円
- その他支出:22,280円
- 合計:239,604円
この家計調査の結果は、あくまでも平均値なので各家庭による差はあります。
老後にかかる主な支出をあらかじめ把握しておけば、老後の生活費にいくら備えておけばいいか対策を練りやすくなるでしょう。
老後に備えておく費用は2,000万円程度
保険料以外にも老後の支出が多いことに驚かれたかもしれませんが、老後の収入で支出を補いきれるのでしょうか?
老後の主な収入は年金収入ですが、厚生労働省年金局が公表した厚生年金の平均月額は約14.8万円、国民年金は約5.5万円と大幅に下回る結果となっています。
仮に65歳まで定年で働いて90歳までの25年間を元気に過ごしたとすると、支出の合計は「24万円×12ヶ月×25年=7,200万円」となります。
退職まで働いた夫と、専業主婦である妻の年金を合算した額を25年間受給した場合は「20.3万円×12ヶ月×25年=6,090万円」です。
差額の約1,000万円は退職金で補える可能性がありますが、退職金が支給されない企業も多いので注意が必要です。
老後の必要な資金を補うための方法3選
老後の必要な資金が2,000万円ということについて触れましたが、この金額は貯めようとしてすぐに貯まるものではありません。
例えば、20歳から60歳までの40年間、毎月コツコツ貯めたとしても、1ヶ月あたり41,668円貯金する必要があります。
20代の給料が少なく住居費や生活費などで何かと引かれることを考えると、毎月41,668円貯めるのは困難と言えます。
では、どうすれば不足する老後の必要な資金を補えるのでしょうか?
老後の必要な資金を補うための方法は以下の3つです。
- 投資信託
- 不動産投資
- ソーシャルレンディング
それぞれの方法について詳しく見ていきましょう。
投資信託
1つ目の方法は投資信託です。
投資信託とは、自分で株式投資や国債投資をするのではなく、運用のプロであるファンドに資金を預けて代わりに運用してもらい、利益を分配金として受け取る運用方法です。
自分で運用せず済むため、資産運用に関する知識や経験が少ない人、資産運用をする時間を確保することが困難な人でも取り組みやすいのが特徴です。
また、少額から始められるほか、利回りが10%を超えているファンドもあるため、少ない資金を効率良く増やしていけると言えるでしょう。
不動産投資
2つ目の方法は不動産投資です。
不動産投資とは、投資用の不動産を購入して、貸し出して家賃収入を得る運用方法です。
投資用の不動産を購入するにはある程度資金が必要ですが、条件が合えば金融機関の融資を受けられるため、自己資金が少なくても始めることが可能です。
得られる家賃収入は、老後の私的年金代わりになるだけでなく、資金が必要になった場合は不動産を売却すれば現金化できるなど、老後の資金作りに適している運用方法と言えるでしょう。
ソーシャルレンディング
3つ目の方法はソーシャルレンディングです。
ソーシャルレンディングとは、融資を望んでいる企業に対して資金を提供して利息を得る運用方法です。
似たような資金の調達方法に社債がありますが、社債は発行条件が複雑であるため、ソーシャルレンディングを利用する企業が増えています。
「融資先の企業が破綻すれば元本が回収できないのでは?」と不安に感じる人もいるかもしれませんが、中には担保が設定されていて元本が回収できるものもあります。
ソーシャルレンディングの利回りは5%程度と銀行に預けるよりも利回りがいいため、効率良く資金を増やしていけるでしょう。
まとめ
老後を迎えるまでは、企業に勤めている人であれば社会保険に加入しているため、保険料が企業との折半になるほか、扶養者の保険料は負担せず済むので費用を大きく抑えられます。
しかし、退職した後は国民健康保険に加入することになり、もちろん、保険料も会社との折半ではなくなります。
また、扶養者も保険に加入することになるため、保険料の負担が大きくなります。
老後の支出に備える為にも、資産運用などを視野に入れながら計画的に貯めていきましょう。