2019年10月に消費税が10%に引き上げ、高齢者の医療費負担引き上げも検討されるなど、老後の生活に不安を抱く人も多いことでしょう。

そのため、老後にかかるお金を予め把握し、現役時代のうちに老後資金を準備しておく必要があります。

老後を迎えてから収入を増やすことは、ほぼ不可能に近いからです。

そこで今回は、老後にかかるお金がいくらなのか、また老後貧乏を防ぐために必要な資金がいくらなのか解説します

老後は意外とかかるお金が多い

老後は意外とかかるお金が多い

老後にかかるお金がいくらなのかご存知でしょうか?

総務省の実施した家計調査によると、世帯主が60歳以上の無職世帯の1ヶ月の平均支出は約23万9,604円と言われています。

平均支出の内訳は以下のようになっています。

老後の平均支出内訳
  • 食費:68,193円
  • 住居費:14,346円
  • 水道光熱費:20,427円
  • 家具・家事用品:9,290円
  • 被服等:6,737円
  • 保険医療費:14,646円
  • 交通・通信費:26,505円
  • 教育・教養娯楽費:25,712円
  • お小遣い:6,225円
  • 交際費:25,243円
  • その他支出:22,280円

 

あくまでも平均的な支出であるため、中には「教育・教養娯楽費はここまで大きくない」という人もいるでしょう。

しかし、平均支出がどのくらいか把握しておけば、老後にかかるお金が明確になるため、不足する老後資金の準備を計画的に進めやすくなります

老後にかかるお金で特に注意しておくべき必要があるのが、「住居費・医療費・介護費」の3つです。

それぞれにかかるお金について見ていきましょう。

住居にかかるお金はいくらか

持ち家の戸建住宅に住んでいる場合にかかる主なお金は、固定資産税・都市計画税、修繕費です。

建物部分は、減価償却で老後はほとんど固定資産税や都市計画税がかかりませんが、代わりに修繕費がかかるようになります。

例えば、65歳で退職してから90歳まで25年間元気に過ごした場合は、固定資産税・都市計画税が年間20万円とすると、500万円かかることになります。

また、クロスの張替えや外壁塗装などの修繕で10年に1回200万円の修繕が生じた場合には、500万円に400万円加わって900万円の支出を想定しておかなくてはなりません。

マンションは土地の占める割合が少なくなるため、固定資産税・都市計画税は比較的少なくなります

一方、建物の劣化状況に関係なく管理費・修繕積立金が徴収されるため、支出が戸建よりも多くなる可能性があります。

例えば、上記同様に65歳で退職してから90歳まで25年間元気に過ごした場合、固定資産税・都市計画税が年間15万円とすると、375万円かかることになります。

管理費と積立金が1ヶ月あたり3万円程度生じた場合には、375万円に900万円が加わって1,275万円の支出を想定しておかなくてはなりません。

賃貸の場合は毎月家賃が発生するなど、住居にかかるお金は必ず発生するものであるため、いくらかかるのか明確にしておきましょう。

医療にかかるお金はいくらか

高齢になればなるほど、何かしからの身体の不調が生じる可能性があるため、医療にかかるお金もしっかり把握しておく必要があります。

日本の医療制度の中には、高額療養費制度があるため、万が一高額な医療費を支払う必要が生じた場合でも払い戻しが受けられます。

しかし、入院などで必要になる食費や居住費、差額ベッド代、先進医療にかかる費用、保険範囲外の治療などは高額療養費制度の範囲外で、実費負担になるので注意が必要です。

70歳以上の医療費は年間80万円程度と言われており、1割負担であることを考えると約8万円負担していることになります。

少子高齢化によって国の医療費補助が膨らむ背景から、高齢者の自己負担割合引き上げが検討されていることを考えると、今後老後の医療にかかるお金が増える可能性もあるので注意しましょう。

介護にかかるお金はいくらか

高齢になると何らかの理由によって介護が必要になるケースがあります。

ある程度は公的介護保険で補えると言っても、それ以上に費用がかかるので介護にかかるお金もある程度準備しておく必要があります。

生命保険文化センターが実施した「公的介護保険を除き、いくらくらい介護にかかるお金を準備すべきか」という調査では、10~15万円程度と回答した人が30%程度を占めています。

ヘルパーの人件費のほか住宅改修費用などで費用が膨大になるケースもあるため、老後を迎える前にしっかりと備えておきましょう。

老後の収入は支出よりも少ない

老後の収入は支出よりも少ない

60歳以上無職世帯の平均支出は、1ヶ月あたり23万9,604円と言いましたが、実際の厚生年金の平均受給額は14万7,927円、国民年金は5万5,464円となっています。

この現状を見ると、いかに老後の生活が困難であるかが分かると思います。

金融広報中央委員会が公表した「家計の金融行動に関する世論調査」では、60歳代の単身世帯では26.7%、2人以上世帯では22.0%が金融資産を有していないという結果になっています。

また、70歳以上の2人以上世帯では28.6%と、4世帯に1世帯は貯金などの金融資産がなく、年金だけに頼るまたは生活保護を受けているのが現状です。

老後を迎える前に退職金を受け取っているにもかかわらず、なぜ金融資産が底をつくのでしょうか?

退職金は必ず貰えるとは限らない

「退職金は必ず受け取れるもの」と勘違いしている人は、老後貧乏に陥る可能性があるので注意が必要です。

労働基準法では、退職金は必ず支払うものではなく、企業が退職金制度を設けている場合のみ支払われるものとされています。

従業員を多く抱えている企業では、退職金制度を導入している企業が多くありますが、中小企業では退職金制度を導入していないケースも見られます。

全体では約4分の1の企業が退職金制度を設けておらず、貰えると思って老後に備えていない場合には、老後貧乏に陥る可能性が高くなるので注意が必要です。

退職金は平均して数千万円貰える企業が多く、不足する老後資金の大きな支えになります。

退職金が出るかどうかだけでなく、いくら貰えるか確認するなど、状況をしっかり把握しておきましょう。

老後に不足する資金を補う方法

老後に不足する資金を補う方法

厚生年金の平均受給額と老後の平均支出を比べると、毎月約9万円不足するという結果になっています。

仮に、65歳から90歳まで25年間元気に過ごした場合は、9万円×12ヶ月×25年=2,700万円必要です。

退職金があったとしても、住宅ローンの残債の返済に充てる可能性があることを考えると、不足するという現状に変わりありません。

数千万円を貯めるとなると、すぐ貯まるものではないため、計画的に貯めていく必要があります。

では、どうすれば効率良く老後に不足するお金を貯められるのでしょうか?

無駄な支出を削減する

老後に不足するお金を貯めていく方法の1つ目は、無駄な支出の削減です。

例えば、月会費や年会費が発生するものに加入しているにもかかわらず、それらを利用していない場合には無駄な支出になるのですぐに解約した方が良いと言えます。

また、スマホなどの通信機器にかかるお金も、格安スマホに切り替えることで大幅に支出を削減することが可能です。

支出削減で浮いたお金は老後の資金にできるだけでなく、老後にかかるお金を減らすことにつながるでしょう。

資産運用をする

老後に不足するお金を貯めていく方法の2つ目は、資産運用です。

預金などリスクの小さい運用方法もありますが、得られる利益が少ないため、不足する老後資金を補いきれません。

そのため、不足する老後資金を補うには、ある程度の利益を視野に入れる必要があります

例えば、投資信託や不動産投資などです。

投資信託は運用のプロであるファンドが代わりに運用してくれるほか、不動産投資は管理会社が代わりに運用してくれるなど、運用の手間を省けるというメリットがあります。

しかし、資産運用はリスクを伴うため、最悪のケースでは元本割れする可能性もあります

余裕資金で運用を始めるなど、無理のない運用計画を立てましょう。

まとめ

まとめ

老後にかかるお金は、世帯主が60歳以上の無職世帯の1ヶ月の平均支出が約23万9,604円と言われています。

老後の備えを特に何もしていない場合には、年金が唯一の収入になります。

しかし、年金や退職金で一部を補えるといっても、完全に補いきれるわけではありません。

老後の平均年金は平均支出を大幅に下回っているため、支出削減や資産運用でしっかり補っていくようにしましょう。

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