会社勤めの人は、給料から年金が天引きされるため、老後の年金なしというケースはほぼないと言えますが、自営業者の中には国民年金が未納の人もいます。

年金が未納あるいは下限の加入年数を満たしていない人は、老後の年金なしという状況になりますが、問題はあるのでしょうか?

そこで今回は、老後の年金なしが及ぼす影響と年金なしを乗り切る対策を解説します

老後の年金なしはなぜ起こるのか

老後の年金なしはなぜ起こるのか

会社勤めの人の場合には、公的年金の掛け金が給料から天引きされているため、未加入というケースはほとんどありません

また、公的年金は、20歳以上60歳未満の国民すべてが加入する義務がある制度なので、老後の年金なしが生じること自体に問題があります。

しかし、加入義務があるにもかかわらず、国民年金保険の納付率は6~7割となっており、3~4割の人が未加入なのが実態です。

未加入の理由には、働き方の多様化で正社員として働いておらず、給料から公的年金の掛け金が天引きとなっていないケースや自営業などで収入が少なく掛け金を支払えないケースなどがあります。

「義務と言っても理由があれば掛け金を支払わなくてもいいのか」と思った人もいるかもしれませんが、そういうわけではありません。

義務であることに変わりはないため、未納状態が続くと、最悪の場合は財産の差し押さえに発展する可能性があります

マイナンバー制度が導入されたことで、以前よりも国民一人ひとりの税金や年金の情報がより明確に管理されているため、今後は未納というケースがなくなり、老後の年金なしという人は少なくなるでしょう。

年金制度の実態

年金制度の実態

国民年金保険の掛け金を支払わず、差し押さえなどに発展せずに老後を迎えた場合には、老後の年金なしの状態となります。

では、年金を支払った場合と年金を支払わなかった場合では、どれだけ老後の収入に差が生じるのでしょうか

老後に支給される年金の目安と老後の生活費の目安について詳しく見ていきましょう。

老後に支給される年金の目安

老後に支給される年金は国民年金厚生年金の主に2種類です。

自営業の人は国民年金に加入しますが、満額支給額は77万9,300円となっており、月で割ると6万5,000円程度が支給されます。

一方、会社勤めのサラリーマンなどが加入している厚生年金の平均受給額は、1ヶ月あたり15万円程度となっており、国民年金と合わせると21万5,000円程度が支給されます。

老後無職で何の備えもしていない場合には老後の収入が年金のみとなるため、大きな収入源になると言えるでしょう。

老後の生活費の目安

総務省が公表している家計調査年報では、高齢無職世帯の平均支出は1ヶ月あたり24万円程度となっています。

国民年金では毎月18万円程度不足するだけでなく、厚生年金ですら3万円程度不足するため、老後の備えがいかに重要であるかがわかります。

仮に老後年金なしの状況で、60歳で退職して90歳までの30年間元気に過ごしたとすると、「24万円×12ヶ月×30年=8,640万円」が老後資金として必要です。

会社から2,000万円退職金として支給されても、不足する6,640万円を補わなければなりません。

国民年金保険の掛け金を支払わずに、老後の年金なしを選択した場合には、老後の生活がかなり苦しくなると言えるでしょう。

老後の年金なし対策5選

老後の年金なし対策5選

老後の備えを何もしていない場合でも、公的年金さえ掛けていれば老後の安定した収入を確保できますが、掛けていないと老後の収入はほぼ0と言えます。

老後の生活費の目安を見て、老後の年金なしという状況に不安を感じた人もいると思いますが、対策はあるのでしょうか?

老後の年金なしへの対策は以下の5つです。

  • 国民年金に任意加入する
  • 国民年金を後納する
  • 生活保護を申請する
  • リバースモーゲージを活用する
  • 資産運用を始める

それぞれの対策について詳しく見ていきましょう。

国民年金に任意加入する

老後の年金なし対策の1つ目は、国民年金に任意加入することです。

国民年金は、60歳以上70歳未満であれば自分の意志で加入することが可能です。

以前まで25年以上の加入が受給要件でしたが、法改正で10年以上加入していれば受給要件を満たすことになりました。

「気づくのが遅かったので10年以上の受給要件を満たせない」と思っている人も諦めてはいけません。

収入がほとんどない学生や専業主婦、海外に在住していた期間がある場合は加入期間とみなされるケースもあります。

国民年金に任意加入して老後の収入が少しでもある状況に変えられれば、老後貧乏になるリスクを抑えられるでしょう。

国民年金を後納する

老後の年金なし対策の2つ目は、国民年金を後納することです。

国民年金の掛け金は、納付期限から2年間となっており、2年前にさかのぼって掛けられます。

しかし、それでも受給要件を満たせない場合は、国民年金の受給を諦めるしかないのでしょうか?

そこで登場するのが国民年金の後納制度です。

国民年金の後納制度とは、受給額の少ない人や受給要件を満たせない人を救済する目的で設けられました。

2012年10月1日~2015年9月30日までは納付期限を2年から10年に、2015年10月1日~2018年9月30日までは納付期限を2年から5年に延長する特例措置が設けられました

現在は「10年」「5年」の後納制度が終了していますが、今後再開される可能性もあるため、適宜国民年金に関する情報を確認しておいた方が良いでしょう。

生活保護を申請する

老後の年金なし対策の3つ目は、生活保護を申請することです。

日本の社会保障制度には、生活保護という生活に困窮している人を救済するための制度があります。

生活保護制度は、年金がない場合でも生活費補助、住宅補助、医療補助といった様々な補助を受けられます

しかし、生活保護は申請を必要とするもので誰でも制度を利用できるわけではありません。

家族の支援を受けられる、働ける、何らかの資産がある場合には制度を利用できないため、老後の年金なしで生活が行き詰った場合の最終手段と考えた方が良いでしょう。

リバースモーゲージを活用する

老後の年金なし対策の4つ目は、リバースモーゲージを活用することです。

老後の生活費が不足する現状から、自宅を担保に住み続けながら融資を受けられるリバースモーゲージが注目を集めています。

老後の資金が不足して金融機関から融資を受けようとしても、安定した収入がないため、融資を受けられる可能性は低いと言えます。

しかし、自宅という担保があるため融資を受けやすく、亡くなった際に自宅を売却して返済するため、老後の年金代わりになります。

自宅を売却して一時的にお金が手に入っても、その後の住居を確保する必要があることを考えると、魅力的なサービスと言えるでしょう。

資産運用を始める

老後の年金なし対策の5つ目は、資産運用を始めることです。

老後の費用を補えるのは年金だけではありません。

不動産投資の家賃収入や、投資信託の分配金といった安定した利益を継続的に得られる資産運用を始めておけば、老後の私的年金代わりになります。

しかし、資産運用を始めるにあたって様々なリスクを伴うだけでなく、ある程度の資金が必要です。

老後の年金なしという状況は、老後貧乏からの老後破綻へとつながる可能性が高いため、しっかりと備えておくようにしましょう。

まとめ

まとめ

公的年金は加入が義務なので、老後年金なしというケースはほとんど考えられませんが、何らかの理由で年金の掛け金を払わないまま、老後の年金なしとなるケースがあります。

しかし、老後の生活費は想像以上に多くかかるため、老後の備えをしていない場合には、老後破綻に陥る可能性が高いので注意が必要です。

老後の年金なしという状況で老後破綻を防ぐためには、「国民年金に任意加入する」「国民年金を後納する」といった対策が挙げられます。

対策と言っても、完全に補えるわけではないため、老後の生活費を確保する計画をしっかりと立てておくだけでなく、公的年金に加入することを忘れないようにしましょう。

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