漫画やドラマなどでは、闇金からお金を借りた場合に取り立てが行われるシーンで「臓器を売って返済しろ」という台詞を聞いたことがある人もいると思います。
この台詞を聞いた人の中には、「臓器提供でお金がもらえるの?」と気になった人もいると思いますが、臓器提供でお金はもらえるのでしょうか?
そこで今回は、臓器提供でお金がもらえるのか、臓器提供の実態について解説します。
臓器提供でお金がもらえる?
闇金を取り上げている漫画やドラマなどでは、借金の取り立ての際に借入をしている人に返済ができない場合には、臓器を売って返済するように催促しているシーンが見られます。
そのようなシーンでは、具体的に1つの臓器につきいくらといった金額が記載されているケースもあり、本当に臓器提供でお金がもらえるか気になっている人も多いのではないでしょうか?
しかし、日本国内の臓器提供の現場では、2010年の改正臓器移植法(臓器の移植に関する法律)によって臓器売買は禁止されており、そのような行為を行った場合は5年以下の懲役または500万円以下の罰金に処せられます。
臓器売買が行われているのは、日本国内の話ではなく海外の話です。
しかも、海外でも臓器売買を禁止している国が多いため、実際に取引されているのは貧困国をターゲットにした闇市場での臓器提供です。
日本では臓器提供によってお金をもらう行為は法律で禁止されていますが、臓器提供とはそもそもどのような仕組みなのでしょうか?
臓器提供について詳しく見ていきましょう。
臓器提供とは
臓器提供とは、病気や事故などで臓器が機能しなくなった人に健全な臓器を提供することです。
健康な家族から臓器提供をしてもらって家族間で臓器移植を行うケース、そのような人が身近にいない場合には亡くなった人から臓器提供をしてもらって臓器移植を行うケースの大きく2つに分かれます。臓器提供が可能な臓器は、心臓や肺、肝臓、腎臓、小腸、眼球(角膜)などです。
これらの臓器を必要としている人は、実際にどのくらいいるのでしょうか?
年間1万4,000人が臓器提供を必要としている
日本臓器移植ネットワークに登録していて臓器提供者が現れるのを待っている人たちは、約1万4,000人です。
これらの人たちに十分な臓器が提供できているかというと実際には提供できていません。
亡くなった人から臓器提供してもらうケースが多いため、年間400人程度しか臓器提供を受けることができていないのが現状です。2019年8月31日時点で臓器提供を希望している人の人数は以下の通りです。
- 肺:366人
- 肝臓:334人
- 心臓:780人
- 膵臓:211人
- 腎臓:12,332人
- 小腸:6人
亡くなった人から臓器提供してもらっても、まだまだその数が不足しています。
2010年に改正臓器移植法が施行される前は、脳死での臓器提供には本人の意思表示や家族の承諾が必要でした。
しかし、施行後は、本人が拒絶しているケースを除いて、家族の同意さえあれば臓器提供ができるようになりました。
脳死とは
臓器提供は、健康な家族または亡くなった人から行われるとのことでしたが、脳死に至った人も亡くなった人に含まれます。
「脳死と植物状態は何が異なるの?」という疑問が生じた人もいると思いますが、脳死とは呼吸や循環機能の調整といった生命を維持するために必要な機能が失われている状態です。
一方、植物状態とはそれらの機能が残っており、回復する可能性がある状態です。
つまり、一度脳死に陥ると、薬剤や人工呼吸器などで一時的に生命を維持できても、最終的に心臓が停止するので長くは維持できません。
そのため、脳死に至るということは事実上の死と同様の状態であることから、臓器提供者に含まれています。
骨髄移植に対する助成金制度
臓器提供者には、臓器提供にかかる費用は一切かかることはなく、善意に基づく提供なので葬儀費用や謝礼が支払われるということはありません。
しかし、骨髄移植の場合には、自治体によっては助成金制度を導入している場合があります。
骨髄バンクによると、2019年12月時点では、41都道府県614市区町村で提供者に対して助成を行っています。助成金制度の内容は、各自治体によって異なりますが、提供ドナーへの助成金として通院や入院に対して1日につき2万円(上限14万円)、雇用している企業には1日につき1万円(上限7万円)が一般的です。
保険給付が受けられる商品もある
民間保険に加入している場合、商品によっては骨髄移植の提供ドナーになると保険給付を受けられる可能性があります。
入院給付日額の10~20倍程度の一時金を受け取ることができるように設定されているのが一般的です。助成金制度や保険給付などの制度を利用することによって、少しでもお金を増やしたいと考えている人がいるかもしれませんが、安易な考えは禁物です。
提供ドナーになる場合、1週間程度の入院に加えて、複数回にわたる通院が必要になります。
また、何かしらの後遺症が残る可能性もゼロとは言い切れません。
提供ドナーが増えることで、骨髄移植を必要としている患者さんが少しでも助かることはうれしいことです。
しかし、お金が欲しいという気持ちで安易にドナー登録をしないように注意しましょう。
臓器提供を有償にするとどうなるか
「臓器提供を有償にすれば臓器提供を待つ人たちの悩みを緩和できるのでは?」と考える人もいるかもしれませんが、もし臓器提供者に対してお金を払うようにすれば問題は解決されるのでしょうか?
臓器提供者に対してお金を支払った場合に考えられるトラブルは以下の2つです。
- 人身売買といった犯罪が増加する
- 提供を望む人の元に届かなくなる
それぞれのトラブルについて詳しく見ていきましょう。
人身売買といった犯罪が増加する
貧困が激しい国々では、闇市場で臓器提供を行うために人身売買が増加しています。
現在の日本では、臓器売買を禁止しているため、人身売買といったトラブルが生じるということはありません。しかし、仮に臓器提供者に対してお金を支払うことが認められた場合は、人身売買といったトラブルが生じる可能性が高くなるでしょう。
提供を望む人の元に届かなくなる
臓器提供者にお金を支払うことが認められた場合には、より高く買い取ってもらえる人に臓器を提供しようとする人が増えます。
そうなると、臓器移植を希望して待っている人たちに臓器が届かなくなります。
その結果、お金がある人だけが臓器提供を受けられることになるため、平等性を保つことができなくなるでしょう。
万が一に備えて意思表示をしておくことが重要
日本は臓器売買が法律で禁止されているため、臓器提供を行ってもお金を受け取ることはできません。
臓器を提供した場合、お金を受け取ることはできませんが、高齢労働大臣から感謝状が贈られます。
臓器提供を望んでいる人の数は約1万4,000人ですが、年間で400人程度しか臓器移植が行われていません。
ドナー登録の数が増えれば、1人の提供者の臓器で複数人の臓器移植を望んでいる人たちの命を救うことができます。元気に過ごしていても突然死する可能性はゼロではありません。
ドナー登録に興味がある人は万が一に備えて早めに意思表示をしておきましょう。
まとめ
日本では臓器を売買することが法律で禁止されているため、臓器提供でお金をもらうことはできません。ただし、骨髄移植の提供ドナーの場合には、自治体によっては助成金を受け取れる、民間の保険会社によっては保険金給付が得られる可能性もあります。
入院や通院、何かしらの後遺症が残る可能性があるため、お金目的でドナーになるといった安易な考えはやめましょう。