投資信託は資産運用の1つですが、運用に成功すれば売却益や分配金といった利益を手に入れることが可能です。
会社から支払われる給料には所得税と住民税がかかり、源泉徴収によって受け取る際には既に引かれているのが一般的ですが、投資信託の利益には税金がかかるのでしょうか?
そこで今回は、投資信託の利益に税金はかかるのか、投資信託の税金について解説します。
投資信託の利益は譲渡益と分配金に分けられる
給料に対する税金は、累進課税が適用されており、多ければ多いほど税率が高くなります。
投資信託の場合は給料のような総合課税ではなく分離課税が採用されているため、独自の税率が適用されます。
投資信託の利益は、譲渡益と分配金の2種類です。
譲渡益とは、価格が上がった投資信託を売却することによって得られる利益のことです。一方、分配金とは、投資信託で受け取れる株式投資の配当に似たような定期的に受け取れる利益を意味します。
譲渡益と分配金は利益の大きさに関係なく同じ税率が適用されます。
税率は所得税15%と住民税5%を合わせた20%です。
2037年までは復興特別所得税として所得税が2.1%上乗せされます。
そのため、現在は復興特別所得税を上乗せした20.315%が税金として投資信託の利益に課せられています。
原則確定申告が必要
給料の場合には、源泉徴収によって会社が代わりに給料から所得税と住民税を差し引いて納めてくれていましたが、投資信託も証券会社が代わりに収めてくれるのでしょうか?
投資信託で利益が生じた場合には、原則確定申告が必要です。確定申告では、年間の所得に基づいて所得税を算出して納めます。
しかし、確定申告が不要な場合もあるため、どのような場合に確定申告が必要、不要なのか事前にしっかりと確認しておくことが重要です。
投資信託と確定申告の仕組みについて見ていきましょう。
源泉徴収ありの特定口座の場合は不要
投資信託の取引を始める際には、特定口座か一般口座のどちらかを開設します。
一般口座は、年間の損益計算を自分で行わなくてはなりません。
特定口座は、年間の損益計算を投資信託の販売会社が行ってくれるため、損益計算の手間と時間を省くことが可能です。
特定口座はさらに源泉徴収ありと源泉徴収なしに分かれています。
源泉徴収ありの口座を選んだ場合には、販売会社が源泉徴収を行ってくれるため、確定申告を行って税金を納める必要はありません。
同じ特定口座でも源泉徴収なしを選んだ場合、一般口座を選んだ場合は、確定申告で税金を納めなくてはならないので注意が必要です。給与以外の所得が20万円以下の人は不要
源泉徴収なしの特定口座を選んだ場合、一般口座を選んだ場合は、確定申告で税金を納める必要があると言いましたが、必ず納めなくてはならないというわけではありません。
それらの口座を選んでいても、給与所得以外の所得合計が20万円以下であれば確定申告は不要です。
分配金は普通分配金か特別分配金かによって異なります。
普通分配金は投資信託の収益と考えられるため、課税対象となって原則源泉徴収されます。
しかし、分配後の基準価額が個別元本を下回るような場合は、元本払戻金(特別分配金)と考えられるため、課税対象とはなりません。
このように口座に関係なく確定申告が不要なケースもあるため、しっかりと理解してから投資信託を始めましょう。
確定申告をした方が良い事例
投資信託の利益には税金がかかることが分かりました。
また、税金を納めるにあたって確定申告が必要かどうかは、源泉徴収ありの特定口座を選んだかどうか、給与所得以外の所得が20万円を超えるかどうかがポイントになることも分かりました。
利益が20万円を超えていない場合は特に確定申告を行う必要はありませんが、確定申告を行った方が良い事例があります。
確定申告を行った方が良いのは以下の2つの事例です。
- 損益通算をしたい場合
- 繰越控除をしたい場合
それぞれの事例について詳しく見ていきましょう。
損益通算をしたい場合
源泉徴収ありの特定口座内で50万円の利益が生じた場合と、20万円の損失が生じた場合は自動で損益通算されて30万円の利益に対して税金が課されます。
しかし、複数の口座を開設している場合や投資信託以外の口座も開設している場合、自動で損益通算されません。
もし、A口座で50万円の利益、B口座で20万円の損失が生じている場合には、確定申告を行わないと50万円の利益に対して税金が課されて無駄な税金を納めることになります。
そのため、損益通算を行うことで少しでも税金を抑えたい場合には、確定申告を行った方が良いと言えるでしょう。
繰越控除をしたい場合
損益通算によって投資信託で生じた利益に対する税金を抑えられることは分かりました。
しかし、投資であまり利益が得られず、損益通算を行ってもまだ損失が残っている場合にはどうすればいいのでしょうか?
このような場合には、確定申告を行うことで繰越控除を行うことが可能です。
繰越控除とは、生じた損失の損益通算を行ってもまだ損失が残っている場合、翌年以後3年間にわたって相殺できるものです。繰越控除を利用するためには、繰越控除を毎年行わなくてはなりません。
途中で途切れると繰越控除も途切れることになるので注意しましょう。
確定申告を忘れるとペナルティが科される
投資信託で20万円を超える利益が生じており、源泉徴収なしの特定口座または一般口座を選んで取引している状況で、確定申告を行っていない場合にはどうなるのでしょうか?
確定申告を行っていないということは、税金を納めていないことを意味するため、もちろんペナルティが科されます。
例えば、無申告加算税や延滞税が課されますが、悪質と判断されると重加算税が適用される可能性もあります。
また、不正な手段によって納税義務を免れるような行為を行った場合には、5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金、故意でなかった場合でも1年以下の懲役または罰金などの刑事罰に問われる可能性も。
源泉徴収なしの特定口座や一般口座を選んでいる場合は、給与所得とは別に20万円以上の所得があれば確定申告が必須です。
「バレなければ大丈夫」ではなく、バレてからでは取り返しがつかないので、必ず確定申告を行いましょう。
まとめ
給料に対しては所得税や住民税が課されますが、投資信託で生じた利益に対して所得税や住民税が課せられるのか気になっている人は多いと思います。
投資信託で生じた利益に対しても税金が課されますが、給料のように金額に応じて税率が異なる累進課税ではなく、分離課税が適用されています。源泉徴収ありの特定口座の場合には確定申告不要ですが、源泉徴収なしの特定口座や一般口座の場合には給与所得以外の所得が20万円を超えていれば確定申告が必須です。
確定申告を行わないと、無申告加算税や延滞税などのペナルティだけでなく、状況次第では刑事罰に問われる可能性もあるので、確定申告が必要なのかどうかしっかり確認してから投資信託を始めましょう。