株式投資を行う際は、優良企業を見分けることが重要です。
企業が成長を続けるためには、ある程度の投資が求められますが、その投資が意味のない投資だった場合、ただ単に支出が増えて経営が悪化するだけなので注意が必要です。
企業が行った投資が意味のある投資なのかを知る方法が投資対効果です。
投資対効果とは具体的にどのようなものなのでしょうか?
そこで今回は、投資対効果とはどんなものなのか分かりやすく解説します。
投資対効果とはどんなもの?
企業が成長するには、ある程度の投資が求められます。
例えば、生産性を向上させるために実施する設備投資や不動産購入などです。
しかし、これらの投資は必ずしも企業にとってプラスになるとは限りません。
生産性を向上させるために実施したはずの設備投資にかかった費用を回収できなかった場合は、負債が残ってしまいます。
株式投資を行う際に、何も知らないままこのような企業を投資先として選んだ場合は、経営悪化による上場廃止で大きな損失を抱える可能性があるので注意が必要です。では、企業の行っている投資が意味のあるものなのかを判断するにはどうすればいいのでしょうか?
そこで登場するのが投資対効果です。
投資対効果とはどんなものなのか、またよく比較される費用対効果との違いを見ていきましょう。
投資対効果とは
投資対効果とは、長期間にわたって得られる投資の効果のことです。
例えば、販売しているブランドのイメージを良くして顧客の裾野を広げていくという投資方法は、投資対効果に該当します。
投資対効果の特徴は、効果が収入につながるまでに時間がかかるものの、効果が出始めると効果が継続しやすいという点です。企業業績があまり良くない状況にもかかわらず投資対効果が期待される投資を行っている企業は、効果が収入につながる前に破綻する可能性があります。
適切なタイミングで投資対効果が期待される投資を行っているかどうかを確認することが重要と言えるでしょう。
費用対効果とは
費用対効果とは、短期間で得られる投資の効果のことです。
例えば、テレビCMやSNS上に広告を表示するという投資方法は、費用対効果に該当します。
費用対効果の特徴は、効果が収入につながるまでが短期間ではあるものの、効果が出てから効果がなくなるまでの期間が短いという点です。費用対効果が期待される投資は、すぐ収入につなげることが期待できますが、効果が長くは持ちません。
費用対効果が期待される投資だけでは安定した経営状態を維持できません。
費用対効果を高めるだけでなく、同時に投資対効果が期待される投資も並行している企業を選ぶことが重要と言えるでしょう。
投資対効果の計算方法
企業が行った投資の投資対効果を知るには以下の計算式を利用します。
投資対効果(%)=利益÷コスト×100
例えば、A社は企業の成長スピードに合わせて、2,000万円を投資して4,000万円の利益を得ました。
一方、B社はA社よりも会社の規模が小さいですが、成長スピードに合わせて、500万円を投資して2,000万円の利益を得ました。
A社とB社を比較すると、A社の方が多くの利益を得ているため、A社の方が投資先として優れていると考える人もいるかもしれませんが、必ずしもそうとは言い切れません。
計算式に当てはめると、A社の投資対効果は4,000万円÷2,000万円×100=200%ですが、B社は2,000万円÷500万円×100=400%です。同じ投資を行うとするとB社の方が優れているため、今後の成長が期待できると言えるでしょう。
投資対効果を求めるメリット
投資対効果がどんなもので、どのように算出するかは分かりましたが、投資対効果を求めるメリットは何かあるのでしょうか?
投資対効果を求めるメリットとして主に以下の2つが挙げられます。
- 投資が成功したかどうかがすぐに分かる
- 規模の違う企業を比較できる
それぞれのメリットについて詳しく見ていきましょう。
投資が成功したかどうかがすぐに分かる
A社が企業の成長に合わせて、投資対効果を期待して5,000万円の投資を行ったとします。
しかし、この投資を行ったにもかかわらず、3,000万円の利益しか生じなかった場合には、投資対効果はどうなるのでしょうか?
このような場合は、先ほどの計算式に当てはめると3,000万円÷5,000万円×100=60%となります。
100%を切るということは、行った投資への投資対効果が得られていないことを意味します。つまり、投資対効果を求めることで、企業が成長のために行っている投資が成功したのかが一目瞭然です。
今後の成長が期待できる企業なのか、投資が失敗して将来的に経営が悪化する企業なのかある程度予想できるため、投資で失敗するリスクを減らすことが期待できるでしょう。
規模の違う企業を比較できる
規模の違う企業を比較する際は、どうしても利益の額を比較してしまうため、正確な判断が難しいと言えます。
例えば、A社が会社の売上を伸ばすために投資対効果を期待して10億円の投資を行って、30億円の利益が生じた場合は、30億円÷10億円×100=300%の投資対効果があったと判断できます。
一方、B社が1,000万円の投資を行って、5,000万円の利益が生じた場合は、5,000万円÷1,000万円×100=500%です。
利益という点ではA社の30億円の方が印象に残りますが、投資対効果という点ではB社が優れていることが分かります。A社は会社規模が大きく、投資を実施しても期待した通りの投資対効果が得られていません。
一方、B社は期待以上の投資対効果が得られており、伸び代が大きいことが分かるのでどの企業に投資すれば良いかが分かりやすいと言えるでしょう。
数値で計測できない利益が反映されないので注意
投資対効果を求めることによって、企業が成長のために行った投資の効果があったのかを判断することができました。
しかし、この投資対効果の計算式には、投資の効果を全て反映できているわけではありません。
例えば、売上はさほど増えなかったものの、顧客が増えている場合は今後顧客1人当たりの購入単価が上がれば利益が増える可能性があります。
ところが、投資対効果にはこの顧客が増えたという数値は関係ないため、成長しない企業と認識することでチャンスを逃してしまう可能性もあるので注意が必要です。
また、投資対効果は収入につながるまでに時間がかかるもので、いつ計算するかによっても結果は大きく異なります。
投資対効果だけでどの投資先にするのかを選ぶのではなく、費用対効果や他の情報なども駆使しながら安定した利益が期待できる投資先を選びましょう。
まとめ
株式投資を行う際に、「大企業は経営破綻することはないので安心」と大企業を選んでいる人も多いと思います。
しかし、航空会社の日本航空(JAL)は再上場を果たしていますが、過去に一度破綻しています。
破綻した時に日本航空の株式を保有していた人たちは、株式が無価値になるという経験をしており、同じ過ちに陥らないためにもしっかりと投資先を選ばなくてはなりません。
そこで重要なのが、今後成長が期待できる企業や安定した経営状態を維持している企業を選んで投資するということです。
それらを判断する際に利用するのが投資対効果です。
投資対効果は100%以下では効果を発揮できていない、100%を上回っていれば効果を発揮できていると判断できます。しかし、全ての投資の効果が投資対効果を求めることで分かるわけではないため、その他の情報も駆使しながら、安定した利益が期待できる投資先を選びましょう。