私的年金は自分の老後のために積み立てる積立方式です。
一方、公的年金は現役世代が年金受給世代を支える賦課方式です。
少子化が進行して現役世代が少なくなると、自分たちが将来年金受給世代になった場合に受け取れる年金が少なくなる可能性がありますが、問題なく受け取れるのでしょうか?
そこで今回は、将来の年金は大丈夫なのか、安心して老後に備えるための方法について解説します。
将来の年金は大丈夫?
日本の平均寿命は男女ともに80歳を超え、国内の100歳以上の人口も増加しているため、人生100年計画を立てることが求められています。
「将来年金が受け取れるので大丈夫」と思っている人も多いかもしれませんが、人生100年計画を建てる際に、厚労省は2,000万円程度の自助努力が必要と公表しています。
つまり、年金収入だけでは、将来必ずやってくる老後の生活費を補えないということです。
もし年金制度が破綻した場合は、それ以上の自助努力が求められるようになります。
将来の年金は大丈夫なのでしょうか?
年金の仕組みについて詳しく見ていきましょう。
年金制度の仕組みは大きく2つに分けられる
年金制度は大きく以下の2つの仕組みに分けられます。
- 積立方式
- 賦課方式
それぞれの特徴について解説します。
積立方式
積立方式とは、将来のためにお金を積み立てていく方法です。
私的年金では積立方式が採用されています。
基本的に、自分が老後のために積み立てたい金額を原資として、それを運用して増やしていきます。
運用に失敗した場合には受け取れる金額が少なくなってしまいますが、運用に成功すれば原資よりも多く受け取れる可能性があるのが特徴です。
運用方法を元本保証のある低リスクの運用方法に切り替えれば、確実に原資以上を受け取ることができます。そのため、将来確実に決まった金額を受け取りたい人には最も適している方法と言えるでしょう。
賦課方式
賦課方式とは、将来のためにお金を積み立てていくのではなく、現役世代が年金受給世代の年金を納める方法です。
公的年金保険では賦課方式が採用されています。
自分が積み立てた分を将来受け取れるわけではなく、自分が年金受給世代になった時にはその時の現役世代に支えてもらわなくてはなりません。
しかし、現役世代に支えてもらうと言っても、現在のように少子化が進行している状況では年金受給世代を支える現役世代が不足しており、財源が枯渇する可能性もあるので注意が必要です。
受給年齢の引き上げに備える必要がある
賦課方式を採用している公的年金保険は、少子化による現役世代の減少、高齢化による年金受給世代の増加を考慮して、受給年齢を60歳から65歳に引き上げました。
これによって、現在は定年も60歳から65歳に引き上げられていますが、さらに65歳から70歳に引き上げることが予定されています。
また、年金の原資が枯渇した場合は保険金の引き上げを実施する可能性も。
受給年齢の引き上げに合わせて定年も引き上げられているため、70歳に引き上げられてもその間の収入を確保することは可能です。
しかし、70歳まで現役の頃のように働くことはなかなか容易ではありません。
途中で退職した場合には、年金を受け取るまでの期間は無収入になるため、受給年齢の引き上げに備えておく必要があると言えるでしょう。安心して将来に備えるための方法とは
将来年金受給が引き上げられた場合でも、安心して老後に備えておくためにはどうすればいいのでしょうか?
安心して老後に備えるための方法として以下の6つが挙げられます。
- 私的年金を検討する
- 不動産投資を始める
- 投資信託を始める
- ソーシャルレンディングを始める
- 外貨預金を始める
- 繰下受給を申請する
それぞれの方法について詳しく解説します。
私的年金を検討する
私的年金とは、将来に備えて不足する老後の公的年金を補うために自身で掛ける年金です。
私的年金には、国民年金基金、確定拠出年金、確定給付企業年金、保険会社が提供する個人年金保険などが挙げられます。
私的年金は、所得税の保険料控除が受けられる、月々強制的に積み立てられることに加えて引き出しが容易にできないので計画的に将来に備えられるというメリットがあります。
一方、途中で解約した場合は元本割れする可能性があるほか、急にまとまったお金が必要になった時に引き出しにくいというデメリットが。
メリットだけでなくデメリットもよく考えてから私的年金を掛けるかどうか決めましょう。
不動産投資を始める
不動産投資とは、マンションやアパートと言った不動産を購入して、貸し出すことによって家賃収入を得る運用方法です。
投資用不動産を購入する際は住宅ローンを利用できませんが、不動産投資は安定した家賃収入が期待できるほか、不動産を担保にできるので金融機関の融資を受けられる可能性があります。
将来受け取ることができる年金が少なくなった場合でも、安定した家賃収入を得ることができれば、それを補うことが可能です。
また、万が一まとまったお金が必要になった場合でも、不動産を売却することでまとまったお金を確保できるため、おすすめの方法と言えます。
投資信託を始める
投資信託とは、自身で株式投資といった資産運用を行わず、資産運用のプロに資金を預けて代わりに運用してもらう運用方法です。
自ら資産運用を行う場合には、知識や経験、運用を行う時間を確保する必要がありますが、代わりに運用してくれるので本人の負担を大きく軽減できます。
自身で株式投資を行う場合のように大きな利益は期待できませんが、反対に大きな損失を抱える可能性は低いため、将来の年金を補う方法に適していると言えるでしょう。
ソーシャルレンディングを始める
ソーシャルレンディングとは、融資を必要としている企業に融資を行った代わりに利息を受け取る運用方法です。
融資を受けたい企業と少しでも資産を増やしたい人との間で「win-win」の関係が成立するため、双方にとってメリットがあります。
投資信託と同様、安定した利息を受け取れるので将来の年金を補う方法に適していますが、事業がうまくいかずに破綻した場合には元本割れする可能性もあるため、案件をしっかり選ぶように注意しましょう。
外貨預金を始める
少子化が進行した場合は現役世代が減少するため、国の生産性が低下します。
国の生産性が低下すると、景気が悪くなる、円の価値が下がって物価が上昇するインフレに陥る可能性も。
円の価値が下がる円安の状況では、他の通貨の価値が上がるため、円を預金しているよりも外貨を預金した方が良いと言えます。そのため、円のままで将来に残しておくのではなく、外貨として残しておくことをおすすめします。
しかし、外貨はペイオフの対象にはならないため、銀行が破綻した時の補償を受けることができません。
そのため、全部を交換するのではなく一部円として残しておくといったようにリスク管理をしっかりと行いましょう。
繰下受給を申請する
ある程度将来のお金を確保できている場合には、年金の繰下受給を申請するという方法もあります。
現在の年金は65歳から受給開始になりますが、66歳に遅らせると8.4%、67歳で16.8%、最大70歳で42%まで受給額を増やすことが可能です。
仮に受給額が20万円だった場合は、70歳まで受給を遅らせると、28万4,000円受け取ることができます。
65歳を元気で迎えることができて、まだ年金に頼らなくても収入を確保できるような状況、または資産がある場合には、繰下受給を申請するのも1つの選択肢と言えるでしょう。
まとめ
「将来年金受給開始年齢を迎えると年金を受け取れるので老後は心配していない」という人も多いと思います。
しかし、公的年金制度は、現役世代が年金受給世代を支える賦課方式であるため、少子化が進んでいる現状では受給額の引き下げ、保険金の引き上げなどが起きる可能性もあるので注意が必要です。
そのため、将来安心して老後を迎えるには、私的年金に検討する、不動産投資を始めるなど、事前にしっかりと備えておくことが重要と言えるでしょう。